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ダウン症の余分な染色体をCRISPRで除去し、細胞機能を回復

  • 執筆者の写真: Chris Ciari
    Chris Ciari
  • 2025年7月16日
  • 読了時間: 3分

Jordan Joseph(Earth.com スタッフライター)


ダウン症は、21番染色体が1本多い「トリソミー21」によって引き起こされ、発達の違いや学習障害、特有の身体的特徴、健康上の課題などをもたらします。これまでの介入法では、原因となる余分な遺伝物質そのものに直接対処することはできませんでしたが、CRISPR技術によって余分な染色体を取り除くという新しいアプローチが注目されています。


CRISPRで余分な染色体を除去

日本の三重大学・橋爪良太郎氏らの研究チームは、ダウン症細胞から余分な21番染色体を切除することが可能であることを報告しました。この処理により、細胞の挙動が正常に近づくことが確認されています。

トリソミーでは遺伝子の発現が過剰となり、細胞のタンパク質生成や機能が乱れます。しかし、CRISPR-Cas9と呼ばれる遺伝子編集技術で特定のDNA配列を狙って切断することが可能で、**アレル特異的編集(allele-specific editing)**という手法により、余分な染色体だけを狙って除去することができます。

研究では、余分な染色体が除去されると、遺伝子発現が正常化し、タンパク質の生産も正常パターンに戻り、細胞の生存率も向上する結果が得られました。


脳や他の組織への応用の可能性

この手法はまだ臨床応用には至っていませんが、非分裂細胞(例:神経細胞)にも効果がある可能性が示唆されています。これは、成熟後に分裂しない細胞にも遺伝的修復を施せるかもしれない、という重要な発見です。

遺伝子発現の変化も観察され、特に神経発達に関係する遺伝子の活動が高まり、代謝に関わる遺伝子の活動が抑えられる傾向が見られました。これは脳の発達への影響が軽減される可能性を示しています。


成熟細胞(皮膚線維芽細胞)でも成功

この手法は実験室内の幹細胞だけでなく、実際のダウン症患者から採取した皮膚の線維芽細胞でも適用され、染色体の除去に成功しました。これにより、さまざまな体細胞での治療応用が視野に入っています

さらに、処理後の細胞は成長スピードが向上し、細胞老化の原因となる活性酸素(ROS)の生成も減少。これは細胞のエネルギー工場であるミトコンドリアの機能改善と全体的な健康状態の向上を示しています。


今後の展望と課題

この技術にはまだ課題も残っています。たとえば、健康な染色体まで誤って切断してしまうリスクもあり、標的の精度を上げるためのガイドRNAの改良が進められています。

また、DNA修復機構が意図しない修復を行うことを防ぐ方法も研究中です。

将来的には、再生医療や臓器修復のための幹細胞治療に応用できる可能性があります。CRISPRによって1本まるごとの染色体を除去するという今回の成果は、遺伝子編集の可能性を大きく広げるものです。


この研究は米国科学アカデミー紀要「PNAS Nexus」に掲載されています。


 
 
 

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